信用調査大手の帝国データバンク、東京商工リサーチ及び官報(第7451号・第7452号)によると、福岡県糸島市の「出萌株式会社」(代表取締役:岩橋孝行)及び同社の関連会社のいずも食品加工株式会社(福岡県糸島市、同代表)と株式会社糸島ファーム(福岡県糸島市、同代表)は2月5日、福岡地方裁判所から破産手続きの開始決定を受けた。事件番号はそれぞれ平成31年(フ)第55号・第56号・第57号で、財産状況報告集会・一般調査・廃止意見聴取・計算報告の期日は平成31年4月24日午後2時、破産管財人には林優弁護士(佐藤・林法律事務所、福岡県福岡市中央区大名2-4-22 新日本ビル5階、電話:092-712-6543)が選任されている。負債額は同社が債権者73名に対して約58億円、いずも食品加工が約3億9000万円、糸島ファームが約2億円で、3社合計で約63億9000万円となっている。
同社は2004年4月に設立された食品加工ベンチャー。ピーナッツスプラウトの生産・販売を目的に設立され、2006年に佐賀工場を設置して生産・販売を本格化させ、以降は酢漬けやキムチ漬けなどの加工品製造に業容を拡大。食品商社などを通じて首都圏・近畿圏などに製品を出荷していた。高価格ながら高い栄養価で知られるピーナッツスプラウトは近年の健康ブームに乗って需要が拡大し、同社はピーナッツスプラウトの生産で国内トップクラスの地位を確立。2008年11月に福岡市のインキュベート施設へ入居したほか、2009年9月には福岡工場を開設し、2012年3月期の年間売上高は10億円を突破していた。
また、同年に佐賀工場に第二工場を増設し、ピーナッツスプラウト生産を集約したほか、地元産の野菜の卸売や、福岡工場においてグループ会社を通じた惣菜や野菜チップスなどの加工品製造を開始するなど業容を拡大。この間、ベンチャーキャピタルなどからの出資により増資を重ね、2014年に関東工場、2015年には和歌山工場を開設、2017年9月には飲食店を併設する産直店舗「いずもマルシェ酒々井」をオープンし、2018年3月期の年間売上高は約32億1600万円を計上していた。
しかしながら、台風の影響などから設備投資に見合う収益とはならず、急速に増大した借入金の返済が重荷になり資金繰りが悪化する中、不正会計が発覚。一部の金融機関との間で協議・調整を重ねたほか、佐賀第2工場の売却を行い、スポンサー探しを行うなど、事業継続を模索していたが先行きの見通しが立たないと判断したため、今回の事態となったという。関連会社のいずも食品加工はカット野菜などの食品加工を手掛けており、糸島ファームは就労継続支援A型事業所だったという。
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